特定技能「自動車運送業」とは?免許・日本語・受入要件を解説

目次
特定技能「自動車運送業」で外国人ドライバーを受け入れるには、評価試験だけでなく、日本の運転免許と受入企業側の認証が必要です。さらにタクシー・バスは、トラックより高い日本語水準が原則です。2026年の制度変更でA2.2相当の人材にも条件付きの経路が設けられましたが、単独で乗務できる緩和ではありません。
自動車運送業には3つの業務区分がある
自動車運送業は特定技能1号の19分野のひとつで、所管は国土交通省です。業務区分は次の3つです。
- トラック運転者:事業用トラックの運転と運転に付随する業務
- タクシー運転者:事業用タクシーの運転と運転に付随する業務
- バス運転者:事業用バスの運転と運転に付随する業務
運行前後の車両点検、乗務記録、荷役または乗客対応等が含まれます。車両清掃や準備・片付けにも付随的に従事できますが、それだけを担当させることはできません。
なお、自動車運送業が特定技能の対象に追加された閣議決定は2024年3月29日で、評価試験は同年12月に始まりました。2026年1月23日に分野別運用方針が改められましたが、2026年に初めて追加された分野ではありません。
候補者には評価試験と日本の免許が必要
区分ごとに必要な技能は次のとおりです。
| 区分 | 評価試験 | 日本の運転免許 | 追加要件 |
|---|---|---|---|
| トラック | 1号評価試験(トラック) | 第一種運転免許 | — |
| タクシー | 1号評価試験(タクシー) | 第二種運転免許 | 新任運転者研修 |
| バス | 1号評価試験(バス) | 第二種運転免許 | 新任運転者研修 |
国際運転免許証だけでは特定技能外国人として乗務できません。国外の候補者は、評価試験と日本語試験等を先に満たし、後述する「特定活動」の期間に外免切替等で日本の免許を取得する流れがあります。
トラックの日本語要件はA2.2相当以上
トラック運転者の日本語能力は「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上です。JFT-BasicのA2.2や日本語能力試験N4等が例になります。
技能実習2号を良好に修了した人は、職種・作業にかかわらず、トラック区分の日本語試験が免除されます。ただし、自動車運送業分野の評価試験と日本の運転免許まで免除されるわけではありません。
タクシー・バスはB1相当以上が原則
タクシー・バス運転者は乗客対応を伴うため、原則としてB1相当以上が必要です。日本語能力試験ではN3等が例です。技能実習2号良好修了による日本語試験免除も、この2区分には適用されません。
道路状況の説明、運賃や行き先の確認、事故・災害時の案内は、定型文だけでは対応できません。特定技能の日本語要件を満たすことと、乗務現場で意思疎通できることを分けて評価する必要があります。
A2.2で乗務させる場合は同乗措置が必要
2026年の分野別運用方針では、タクシー・バスでもA2.2相当の人材を受け入れる経路が示されました。ただし、受入企業には次の措置が求められます。
- B1相当以上の習得に向けた日本語学習プランを作成する
- 自社に雇用され、乗客対応の指導を受けた者を、乗客や関係機関との意思疎通を補助する要員として同乗させる
「A2.2でも一人で営業運転できる」という緩和ではありません。 同乗者の勤務を継続して組めるか、人件費と車両配置を含めて判断します。一般貸切旅客自動車運送事業は、このA2.2経路の対象から除かれています。
指定された離島・半島地域の乗合バスには、自治体との共生施策や緊急時の情報通信環境を整えることで同乗措置に代える別の仕組みがあります。この場合も日本語学習プランは必要で、地域と事業形態を満たす場合に限られます。
受入企業には許可と認証が必要
受入企業は自動車運送事業を営み、特定技能外国人が働く事業所が道路旅客運送業または道路貨物運送業を行っている必要があります。雇用は直接雇用に限定されます。
さらに、次の認証・認定が必要です。
- トラック:働きやすい職場認証、または安全性優良事業所の認定
- タクシー・バス:働きやすい職場認証
貨物軽自動車運送事業だけを行う事業者は、これらの認証・認定の対象外であるため受入企業になれません。自家用自動車で配送させる制度ではありません。
協議会は在留申請前に加入する
正式名称は自動車運送業分野特定技能協議会です。受入企業は、特定技能または準備活動の「特定活動」の在留申請までに加入します。国土交通省は届出確認に1か月程度を見込むと案内しています。入会金・年会費は発生しません。
1号支援計画の実施を登録支援機関へ委託する場合、その登録支援機関も協議会構成員であり、国土交通省等への協力要件を満たす必要があります。候補者決定後ではなく、在留申請の準備と並行して加入状況を確認してください。
免許取得のための特定活動がある
国外の候補者が日本の免許取得や新任運転者研修を行うため、「特定活動(特定自動車運送業準備)」で入国できる仕組みがあります。在留期間の上限は、トラックが6か月、タクシー・バスが1年です。この期間は特定技能1号の通算5年に算入されません。
期限内に免許取得等を終えられなければ、特定技能1号へ移行できず、準備活動の在留期間も更新できません。国外免許の有効性、取得後の滞在歴、必要書類、教習・試験の予約を採用前に確認します。
特定技能2号と育成就労の対象外
自動車運送業は特定技能1号だけの分野で、2026年7月29日時点では特定技能2号の対象ではありません。また、2027年4月開始の育成就労でも対象となる17分野に含まれません。
したがって、自動車運送業のまま1号から2号へ移行する経路や、育成就労からドライバーを育てる経路はありません。採用時には1号の通算在留期間と、その後の選択肢を本人へ説明する必要があります。
受入れ前の確認順
- トラック・タクシー・バスの区分を決める
- 自社の運送事業許可と認証・認定を確認する
- 候補者の外国免許、運転経歴、評価試験、日本語水準を確認する
- タクシー・バスは新任運転者研修と日本語体制を設計する
- 協議会へ加入して在留申請に進む
- 準備活動中の免許取得期限と費用負担を文書で説明する
FAQ
Q1. 外国の運転免許だけで乗務できますか? → できません。特定技能1号では日本の運転免許が必要です。国外の候補者には、日本で免許取得等を行うための準備活動の在留資格があります。
Q2. タクシー運転者はN4でも採用できますか? → A2.2相当の経路はありますが、日本語学習プランの作成と、乗客対応を補助する自社従業員の同乗が必要です。単独乗務を前提にはできません。
Q3. 登録支援機関に委託すれば協議会加入は不要ですか? → 不要にはなりません。受入企業自身が加入し、委託を受ける登録支援機関も構成員である必要があります。
Q4. 自動車運送業から特定技能2号へ移行できますか? → 2026年7月29日時点では対象外です。自動車運送業は育成就労の対象でもありません。
まとめ
特定技能「自動車運送業」は、トラック・タクシー・バスの3区分です。評価試験だけで採用できる制度ではなく、日本の第一種または第二種運転免許、受入企業の事業許可と認証、在留申請前の協議会加入が必要です。
日本語要件はトラックがA2.2相当以上、タクシー・バスがB1相当以上を原則とします。A2.2相当で旅客運送に従事させる場合は、B1習得の学習プランと意思疎通を補助する自社従業員の同乗が前提です。候補者の合格だけでなく、企業側が同乗・教育体制を継続できるかで採用を判断してください。