日本語教育

特定技能の日本語学習支援とは?義務の範囲・費用負担・実施記録

特定技能1号の受入企業は、義務的支援として日本語学習の機会を提供します。ただし、全員を日本語学校へ通わせ、授業料を全額負担することまで一律に義務づけた制度ではありません。

本人の希望を確認し、教室や教材の情報提供、利用手続の補助などを実際に行える状態にします。制度上の義務、追加教育、会社固有の業務研修を分け、担当・費用・記録方法を支援計画に落とし込みます。

対象は特定技能1号の義務的支援

義務的支援10項目の6番目が「日本語学習の機会の提供」です。受入企業は、1号特定技能外国人支援計画を作成し、自社または委託先を通じて支援します。

この記事で扱うのは、原則として特定技能1号の支援です。特定技能2号には1号と同じ支援計画の作成義務はありません。また、日本語試験に合格して入国した人にも、来日後の学習機会を提供します。試験合格と生活・就労開始後の継続学習は別のものだからです。

義務は日本語学習の「機会」を提供すること

運用要領は、日本語を学習する機会の提供について、次の①〜③のいずれかによる方法で、かつ本人の希望に基づいて行う必要があるとしています。3つすべてを実施する義務ではありません。

1. 就労・生活する地域の日本語教室や認定日本語教育機関等に関する入学案内の情報を提供し、必要に応じて同行して入学手続の補助を行う2. 自主学習のための日本語学習教材やオンラインの日本語講座に関する情報を提供し、必要に応じて教材の入手や利用契約手続の補助を行う3. 本人との合意の下、登録日本語教員等と契約して、日本語の講習の機会を提供する

①は「情報提供」と「必要に応じた手続補助」が一体である点に注意してください。案内だけして本人が手続で困っていても放置する運用は、①を満たしません。

運用要領は、本人の習得状況に応じた適切かつ継続的な学習の機会が必要としています。資料を一度渡して終わらず、勤務時間、交通手段、本人の水準から利用できる選択肢を案内してください。

一方、入管庁のQ&Aは、必ず日本語教育機関や私塾へ通学させなければならないものではないと説明しています。「機会の提供」と「授業の実施義務」を混同しないでください。

本人の希望と課題を確認する

支援を始める前に、本人へ次を確認します。

  • 現在使っている教材と学習方法
  • 読む、聞く、話す、書くうち困っていること
  • 生活、試験、職場のどれを優先するか
  • 通える曜日、時間帯、移動手段
  • 端末や通信環境と、説明を理解できる言語

特定技能の日本語要件を満たしていても、病院、行政、防災、買物などの生活場面で支援が必要なことがあります。

費用は義務的支援と追加教育で分ける

日本語教室や教材の情報収集、申込手続の補助、講師を選ぶための支援など、義務的支援の実施に必要な費用を本人へ転嫁しないようにします。委託料を給与から控除することもできません。

一方、日本語教室や認定日本語教育機関等の入学金・月謝等、日本語学習教材費、登録日本語教員等との契約料等について、企業が全部または一部を負担する経済的支援は、運用要領では任意的支援として例示されています。

「日本語関係の費用はすべて企業負担」「学費はすべて本人負担」のどちらも一律には言えません。義務的支援の実施費か、追加教育費かを見積書と契約で分けます。

ただし、任意的支援だから本人任せでよいという意味でもありません。運用要領は、1号特定技能外国人に過度な学習費用が発生しないよう留意することを求めています。 案内する教室や教材を選ぶ段階で、本人の負担額が現実的かを確認してください。

業務日本語の研修とは分ける

義務的支援でいう日本語は、本邦での生活に必要な日本語を学ぶ機会です。自社の機械名、接客手順、異常報告、記録様式を教える職場日本語研修とは目的が異なります。

同じ教材や講師を使ってはいけないわけではありませんが、計画上は次を分けます。

区分主な目的管理するもの
義務的支援生活に必要な日本語の学習機会案内、申込補助、本人の希望
追加教育試験や継続学習目標、受講、費用分担
業務研修自社の仕事を安全に行う指示、報告、記録、技能教育

この区分が曖昧だと、委託したつもりの業務研修が実施されないことがあります。

自社実施と委託の範囲を決める

支援計画の全部または一部は登録支援機関へ委託できます。日本語学習支援だけを委託することも可能です。

ただし、支援体制の基準を満たしたものとみなされるのは、支援の全部を委託した場合にかぎります。 一部委託にとどめる場合、受入企業は支援責任者・支援担当者の選任など、支援体制の基準を自ら満たす必要があります。「日本語学習支援を委託したから体制要件はクリアした」とはなりません。

支援計画の作り方では、実施者、時期、方法、本人が理解できる言語、記録方法を明確にします。委託契約にも、教室情報の更新、申込補助、受講後の確認のどこまで含むかを書きます。

実施記録を残す

支援を行ったら、少なくとも次を一人ごとに記録します。

  • 本人の希望を確認した日と方法
  • 紹介した教室、教材、講座
  • 使用した言語と説明担当者
  • 申込や利用手続を補助した内容
  • 本人が選んだ方法と、利用しなかった事情
  • 次回の確認日

支援計画と実施内容が一致しているかを説明できるようにし、委託した場合も記録は受入企業が確認します。記録は学習成果を保証するものではなく、適切な機会提供を行った経過を示すものです。

利用できているかを定期的に確認する

申込後も、勤務との両立、教材の難易度、端末環境を確認します。学習を続けない理由を本人の意欲だけに求めず、夜勤、移動、費用、教材水準などの障壁を分けてください。

案内先を選ぶときは認定日本語教育機関の状況も踏まえ、生活相談や定期面談の結果も見ながら選択肢を更新します。本人が希望しない場合も、希望確認と案内を行った経過を記録し、後から希望が変わったときに再案内します。

FAQ

Q1. 特定技能外国人を必ず日本語学校へ通わせる必要がありますか?→ 一律の通学義務ではありません。本人の希望に応じ、教室や教材の情報提供、利用手続の補助などにより学習機会を提供します。

Q2. 日本語学校の授業料は必ず企業負担ですか?→ 授業料等の経済的支援は任意的支援として例示されています。一方、義務的支援を実施するための情報提供や手続補助等の費用を本人へ転嫁しないよう区分が必要です。

Q3. 登録支援機関へ一部だけ委託できますか?→ できます。委託範囲を支援計画と契約に明示し、受入企業が残りの支援を実施できる体制を整えます。

Q4. 3つの方法をすべて実施する必要がありますか?→ ありません。運用要領は「次のいずれかによる方法で、かつ本人の希望に基づき」としています。ただし本人の習得状況に応じた継続的な機会提供が求められます。

Q5. 日本語試験に合格した人にも支援が必要ですか?→ 必要です。試験合格は来日後の生活場面や継続学習の機会を不要にするものではありません。

まとめ

特定技能1号の日本語学習支援は、運用要領が示す3つの方法のいずれかにより、本人の希望に基づいて学習機会を提供する義務的支援です。必ず学校へ通わせる制度ではありません。

義務的支援の実施費、追加教育の費用、会社固有の業務研修を分け、担当と費用負担を明確にしてください。案内した事実だけでなく、本人が利用できる条件だったかを確認し、支援計画と実施記録をつなげることが重要です。

参考リンク

外国人材の日本語教育を、AIで

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