日本語教育

やさしい日本語とは?職場で使える言い換え例と確認方法

外国人従業員に指示が伝わらないときは、本人の日本語力だけでなく、指示する側の言い方も見直します。長い依頼、二重否定、社内用語、曖昧な時間は、必要な行動を分かりにくくします。

やさしい日本語は、難しい言葉を言い換え、相手に配慮した分かりやすい日本語です。短く、具体的に伝え、復唱や実演で理解を確かめます。

国のガイドラインがある

出入国在留管理庁と文化庁は2020年8月、「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」を策定しました。これは主に書き言葉を対象とし、2022年10月には両庁が「話し言葉のポイント」を公表しています。

ガイドラインは厳密な一律基準ではなく、相手の言語背景や日本語能力に応じて調整するものです。外国人を子ども扱いせず、理解できる表現を一緒に探します。

「はっきり・最後まで・短く」話す

「話し言葉のポイント」は、はっきり言う・最後まで言う・短く言うという「ハサミの法則」を示しています。

「雨だから外の作業は午後に回して、先に倉庫を片づけて」のように複数の情報を一文に入れず、次のように分けます。

  • いま、倉庫を片づけてください
  • 外の仕事は午後1時からです
  • 雨が強いときは、田中さんに言ってください

誰が、いつ、何をするかを省略しないことが基本です。

職場で使える言い換え例

場面 分かりにくい表現 やさしい言い換え
共通 〜していただけますか 〜してください
共通 確認しておいてもらえると助かります この紙を見てください
共通 ご遠慮ください ここでは食べないでください
製造 危険ですので立ち入らないでください ここに入らないでください。危ないです
製造 ラインが止まったら報告して 機械が止まったとき、すぐ田中さんに言ってください
製造 不良品は分けておいて 傷がある製品は赤い箱に入れてください
建設 上に注意 上を見てください。物が落ちることがあります
建設 安全帯を着用のうえ作業してください 仕事の前に安全帯を付けてください
介護 お召し上がりになられますか ごはんを食べますか
介護 食事介助をお願いします ○○さんがごはんを食べるのを手伝ってください
外食 オーダーが入ったら確認して 注文の紙が出たら、内容を見てください
宿泊 明後日からシフトが変わります ◯月◯日から、仕事は午前10時から午後6時までです

言い換え後も、その職場の作業や相手の日本語力に合うか確認します。「傷」「内容」などが分からなければ、実物や写真を見せます。

疑問形の依頼を避ける

「記入してもらえますか」「確認していただけると助かるのですが」は、質問なのか指示なのかが曖昧です。業務上必要な指示は「この紙に書いてください」のように最後まで言います。

「〜ましょう」は勧誘にも使われます。「保護具を着けましょう」ではなく、「仕事の前に保護具を着けてください」と、行動と時点を示します。

二重否定と多義語を避ける

「在留カード以外は必要ありません」は、「在留カードを持ってきてください」に変えます。「持ってこなくても問題ないわけではありません」のような二重否定も避けます。

公的ガイドラインは、「結構です」には「良いです」と「要りません」の両方の意味があるため、使わないよう説明しています。「要りません」「それで良いです」と意味を一つにします。

漢語・敬語・社内用語を見直す

  • 「記入する」から「書く」
  • 「持参する」から「持ってくる」
  • 「健診」から「健康診断」
  • 「デリバリー」から「配達」

尊敬語・謙譲語を重ねず、丁寧語を基本にします。ただし、安全帯、非常停止ボタンなど、仕事で覚える必要がある用語は消しません。実物や写真と対応させ、意味を教えます。

「ライン」「入り」など会社ごとに意味が違う言葉も一覧にし、新人教育で説明してください。

日付・時間・数量を具体的にする

「明後日」「夕方」「少し多めに」は、聞く日や人によって解釈が変わります。

  • 明後日から → ◯月◯日からと、具体的な日付で言う
  • 夕方まで → 午後5時まで
  • 少し多めに → 10個
  • 9〜11時 → 午前9時から午前11時まで

書面では元号より西暦を使い、午前・午後を付けます。シフト、集合時刻、数量は数字で復唱させると、取り違えを見つけやすくなります。

理解確認は答えを言ってもらう

「分かりましたか」と聞くと、内容を理解していなくても「はい」と答えることがあります。「大丈夫ですか」という表現自体を禁止する必要はありませんが、指示を理解したかの確認をそれだけで終えないことが大切です。

次の方法で確認します。

  • 「何時からですか」「何個ですか」と具体的に尋ねる
  • 相手の言葉で手順を説明してもらう
  • 機械操作や介助方法を一度実演してもらう
  • 誤りがあれば、言い方や図を変えて再説明する

話す速さを調整するために「この速さで大丈夫ですか」と尋ねる使い方とは区別してください。

書面は読みやすさも整える

ガイドラインは、漢字の量を抑え、漢字にふりがなを付け、行間を空け、読みやすい書体を使うよう示しています。一文一情報にし、三つ以上の情報は箇条書きにします。

重要な専門語は、やさしい説明を添えます。雇用条件は母国語などで理解できるように明示することが求められ、特定技能1号の義務的支援は本人が十分に理解できる言語で行う必要があります(通訳はそのための手段の一つです)。生活面の相談でも同じ考え方を使います。

安全教育はやさしい日本語だけにしない

文化庁の資料は、日本語をほとんど話せない人や、命に関わる医療・複雑な制度の説明では、やさしい日本語が通じないことがあるとしています。

厚生労働省も、外国人の安全衛生教育では、母国語、視聴覚教材、図解など、内容を確実に理解できる方法を求めています。「マンガでわかる働く人の安全と健康」は教材により最大14言語に対応しています。

危険作業では、日本語教育だけに頼らず、母語資料、図、実演、指差し確認を組み合わせてください。

FAQ

Q1. やさしい日本語の公的な基準はありますか? → 出入国在留管理庁と文化庁のガイドライン、文化庁の「話し言葉のポイント」があります。ただし、相手に応じて調整するもので、厳密な一律基準ではありません。

Q2. 「大丈夫ですか」は使ってはいけませんか? → 禁止ではありません。ただし、指示の理解確認をこの質問だけで終えず、時刻・数量・手順を相手に答えてもらいます。

Q3. 安全教育をやさしい日本語だけで行えますか? → それだけで完結させないでください。母語資料、視聴覚教材、図示、実演を使い、理解を確認します。

Q4. 専門用語はすべて言い換えますか? → 仕事上覚える必要がある用語は残し、やさしい説明、実物、写真を添えて教えます。

まとめ

やさしい日本語の基本は、短く、具体的に、最後まで言うことです。疑問形の依頼、二重否定、多義語、曖昧な日付・数量を避け、相手に内容を答えてもらいます。

ただし、安全や権利に関わる説明はやさしい日本語だけで終えません。母語、図、実演、通訳などを組み合わせ、相手が実際に理解できたかを確認してください。

参考リンク

外国人材の日本語教育を、AIで

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