日本語教育

外国人採用で日本語力をどう評価する?JLPTだけに頼らない確認方法

外国人採用の日本語力は、JLPTの級だけでは判断できません。試験結果は制度上の要件や基礎力を確認する材料ですが、職場で必要なのは、指示を理解し、分からない点を聞き返し、異常を報告し、決められた様式に記録する力です。

企業は、試験・会話・業務課題・読み書きを分けて評価し、配属先で必要な最低条件を先に決める必要があります。日本語が流暢に聞こえるかではなく、安全かつ確実に仕事を進められるかを確認します。

日本語試験だけでは職場での遂行力が分からない

日本語能力試験(JLPT)は、言語知識、読解、聴解を測る試験で、会話や作文を直接試験しません。

JFT-Basicは、就労のために来日する外国人が遭遇する生活場面で必要な日本語能力を測るテストで、特定技能1号と育成就労の日本語水準の判定にも使われます。「文字と語彙」「会話と表現」「聴解」「読解」の4セクションで構成されますが、CBTの選択式で解答する形式のため、「会話と表現」も実際に話す力を直接測るものではありません。 自社の機械名、接客手順、報告経路まで確認するものでもありません。

したがって、N3やN4などの級、JFT-Basicの判定だけで「現場で会話できる」と決めるのは危険です。一方、試験結果を無視するのでもありません。試験は共通尺度、面接と業務課題は自社適合の確認として使い分けます。

最初に配属先の言語場面を洗い出す

評価項目は、応募者を見てから作るのではなく、職務から逆算します。配属先の一日を追い、意思疎通が必要な場面を書き出してください。

  • 朝礼や引継ぎを聞く
  • 数量、時間、場所を含む指示を復唱する
  • 分からない単語や手順を聞き返す
  • 遅れ、不良、事故の危険を報告する
  • 点検表、日報、申し送りを書く
  • 顧客や利用者へ定型的な案内をする

「日常会話ができる人」という募集条件では、評価者ごとに判断が変わります。職場日本語研修と同じ業務場面を採用評価にも使うと、入社前後の基準がつながります。

評価を4つに分ける

採用時は次の4領域を別々に記録します。

領域確認する内容確認方法
試験制度上の水準、読む・聞く基礎証明書と公式結果の確認
会話質問理解、説明、聞き返し構造化した面接
業務指示の復唱、異常報告、優先順位配属場面の模擬課題
読み書き掲示、手順書、記録様式実際に近い短い課題

合計点だけで採否を決めず、安全に関わる項目には最低条件を設けます。接客職なら会話、製造なら指示理解と異常報告、介護なら利用者対応と申し送りなど、重みは職務ごとに変えます。

面接は同じ質問と条件で行う

応募者ごとに雑談内容が違うと、比較できません。基本質問、提示資料、回答時間、追加質問をそろえます。通訳を使った部分と本人が日本語で回答した部分も分けて記録してください。

海外オンライン面接では、通信状態や周囲の助言が結果に影響します。本人確認を行い、短い説明を聞いた後に要点を言い直してもらうなど、暗記した自己紹介だけで終わらない課題を入れます。具体的な設問例は日本語面接の質問集にまとめています。

厚生労働省は、採用選考を応募者の適性・能力に基づいて行うよう示しています。家族、信条、生活環境など、職務遂行と関係しない事項を日本語面接の材料にしないでください。

聞き返せることを低く評価しない

分からない指示に黙って従う人より、「どの数量ですか」「この手順で合っていますか」と確認できる人の方が、安全に働ける場合があります。

評価表には、正答だけでなく次を入れます。

  • 不明点を具体的に示せる
  • 数字や固有名詞を確認できる
  • 自分の理解を言い直せる
  • 緊急時に作業を止めて報告できる

発音や敬語の自然さだけを高く評価すると、実務で必要な確認行動を見落とします。

Can-doで合格基準を書く

日本語教育の参照枠では、日本語で何ができるかをCan-doで示します。採用基準も「会話力がある」ではなく、観察できる行動にします。

たとえば「上司から作業場所、数量、期限を含む指示を受け、要点を復唱できる」「設備の異常を、場所と状態を含めて報告できる」という形です。

評価段階は、企業独自に「一人でできる」「確認を受ければできる」「現時点では難しい」などと定義できます。ただし、この社内評価をCEFRやJLPTの公式判定として表示してはいけません。共通尺度と社内基準を別欄で管理します。

評価項目を表の形にまとめる手順は職場日本語のCan-do評価表で解説しています。

採用後の研修条件まで決める

採用時点ですべてできる人だけを選ぶと、候補者が極端に少なくなります。安全上必須の項目と、入社後に習得できる項目を分けてください。

採用記録には、配属条件、研修項目、再評価日、再評価まで担当させない業務を残します。試験要件がある在留資格では、特定技能の日本語要件も別に確認します。社内評価が高くても、制度上必要な証明を代替できるわけではありません。

評価者間のずれを確認する

人事、日本語教育担当、現場責任者では、見ている能力が違います。最初の数人は複数名で採点し、差が出た項目の説明文を直します。

「問題なく話せる」「少し不安」のような感想ではなく、応募者が何を聞き、何を答え、どこで支援が必要だったかを記録します。録画する場合は、利用目的、閲覧者、保存方法を本人へ説明し、社内の個人情報管理に従ってください。

FAQ

Q1. JLPT N3なら職場で会話できますか?→ 級だけでは判断できません。JLPTは会話を直接試験しないため、指示理解、聞き返し、異常報告などを面接と業務課題で確認します。

Q2. JFT-Basicには「会話と表現」があるので会話力を確認できますか?→ セクション名に会話と付きますが、CBTの選択式です。発話そのものを測る試験ではないため、話す力は面接や模擬課題で確認します。

Q3. 日本語が流暢なら読み書きの確認は不要ですか?→ 不要ではありません。口頭では対応できても、手順書、掲示、点検表、申し送りの理解や記入で支援が必要な場合があります。

Q4. 面接で通訳を使ってもよいですか?→ 使えます。ただし、通訳を介した説明と本人が日本語で対応した課題を分けて記録し、日本語力の評価部分を明確にしてください。

Q5. 社内評価で特定技能の日本語要件を証明できますか?→ できません。制度上必要な試験等の証明と、企業が行う業務適性の評価は別です。

まとめ

外国人採用の日本語力は、試験の級だけでなく、会話、業務課題、読み書きに分けて評価します。最初に配属先の言語場面を洗い出し、安全に関わる項目には最低条件を置いてください。

試験は共通尺度、面接は対話力、模擬課題は職場での遂行力を確認するものです。結果を一つの印象にまとめず、採用後の研修と再評価までつなげることが重要です。

参考リンク

外国人材の日本語教育を、AIで

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