日本語教育

職場日本語のCan-do評価表の作り方|業務別に「できる」を可視化

職場日本語の評価表は、「会話力がある」「N3程度」と書くだけでは運用できません。配属先で必要なのは、指示を復唱できる、異常を報告できる、点検結果を記録できるといった具体的な行動です。

Can-doを使うと、誰が、どの条件で、何を、どの程度できれば達成かを文章にできます。企業は、この文章を採用、研修、配属後の評価で共通して使い、担当者の印象による判定を減らします。

Can-doは「日本語で何ができるか」を表す

JF日本語教育スタンダードは、課題遂行能力を「~できる」というCan-doで表します。日本語教育の参照枠も、A1からC2までの水準を、言語を使って何ができるかという考え方で示します。

Can-doは単語や文法の一覧ではありません。「危険という単語を知っている」ではなく、「危険を感じたとき、作業を止め、場所と状態を上司へ伝えることができる」と書きます。

1. 評価する業務場面を洗い出す

最初に、配属先の一日を始業から終業まで追います。

  • 朝礼・引継ぎを聞く
  • 当日の作業指示を受ける
  • 不明点を聞き返す
  • 同僚と作業を調整する
  • 異常や遅れを報告する
  • 点検表や日報を書く
  • 終業時に未完了事項を引き継ぐ

場面を広く集めた後、安全、品質、顧客対応、独立作業に必要なものから優先順位を付けます。職場日本語研修で作った業務場面一覧があれば、そのまま評価表の土台にできます。

2. 条件・行動・達成基準を書く

一つのCan-doは、次の形にすると観察しやすくなります。

> 〇〇の場面で、△△を使い、□□できる。

たとえば、次のように書きます。

  • 朝礼で、作業場所・数量・期限を含む指示を聞き、要点を復唱できる
  • 不明な指示を受けたとき、分からない箇所を示して確認できる
  • 設備異常を発見したとき、場所・状態・発生時刻を班長へ報告できる
  • 点検後、指定された欄へ数値と異常の有無を記入できる

「仕事の日本語ができる」のように複数の行動を一文へ詰め込まず、一回の観察で判定できる単位に分けます。

3. 支援の程度を評価段階に入れる

できる・できないの二択では、どの支援があれば達成できるか分かりません。企業独自の段階として、次のように設定できます。

段階判断の例
一人でできる通常の指示で目的を達成できる
確認があればできる言い換えや一度の確認で達成できる
手本があればできる実演や記入例を見れば達成できる
現時点では難しい支援後も業務目的を達成できない

これは企業の業務評価であり、CEFRやJLPTの公式判定ではありません。「一人でできるからB1」などと自動換算しないでください。

4. 証拠と評価条件を決める

同じCan-doでも、静かな研修室と忙しい現場では結果が変わります。評価表には、評価日、場所、課題、評価者、支援内容を記録します。

証拠には次が使えます。

  • 模擬場面での発話
  • 実際の指示に対する復唱
  • 練習用帳票への記入
  • 顧客対応の模擬会話
  • 本人の自己評価と難しかった点

録音・録画を利用する場合は、目的、閲覧者、保存方法を本人へ説明し、必要な範囲に限定します。録画がなくても、評価者は発話や行動を具体的にメモしてください。

5. 職種別の評価表を作る

共通項目と職種別項目を分けると運用しやすくなります。

区分Can-do例
共通分からない指示について聞き返すことができる
製造不良の種類、数量、工程を報告できる
介護利用者の変化を時間と状態を含めて申し送ることができる
外食注文内容を復唱し、難しい要望を責任者へ引き継ぐことができる
建設危険箇所を示し、作業中止と退避を伝えることができる

分野名だけで作らず、事業所の設備、帳票、指揮命令系統に合わせて表現を調整します。ただし、安全基準や業務手順そのものは日本語講師が決めず、現場責任者が承認します。

6. 採用から研修まで同じ表を使う

外国人採用の日本語評価日本語面接で使用したCan-doを入社時、研修中、配属評価でも使うと、変化を比較できます。

  • 採用時:最低限必要な項目を確認する
  • 入社時:開始水準と研修課題を決める
  • 研修中:支援の程度が変わったかを見る
  • 配属時:単独で任せる業務を決める
  • 配属後:業務変更に合わせて追加する

入社直後の進め方は入社後90日の日本語研修にまとめています。

評価表は人を固定的に格付けするものではありません。担当業務と必要な支援を調整するための記録として使います。

7. 試験結果と別欄で管理する

JLPTやJFT-Basicは、制度上必要な水準や共通の日本語能力を確認する材料です。一方、社内Can-doは特定の職場での行動を確認します。

特定技能の日本語要件を満たしていても、自社の異常報告や帳票記入ができるとは限りません。反対に、慣れた作業を日本語で行えても、在留資格で必要な試験証明を社内評価で代替できません。

評価表では「公的試験」「会話・読み書き」「業務Can-do」を分け、用途を混同しないでください。

8. 評価者のずれを修正する

導入時は、人事、講師、現場責任者が同じ課題を評価し、判定理由を比べます。差が大きい場合は、評価者を責めるのではなくCan-doの文章を直します。

「適切に」「十分に」「問題なく」のような言葉は、人によって意味が変わります。必要な情報、許容する支援、完了条件を具体化してください。日本語研修の成果指標とも共通の定義を使います。

FAQ

Q1. Can-do評価はCEFRのレベル判定になりますか?→ 企業が作った業務Can-doは社内評価です。公的試験や専門的な熟達度判定と自動的に置き換えないでください。

Q2. すべての業務をCan-doにする必要がありますか?→ まず安全、品質、報告、独立作業に必要な場面から作ります。運用しながら追加・統合してください。

Q3. 現場責任者だけで作れますか?→ 業務内容は現場が確認し、日本語の難易度や評価方法は日本語教育担当と協力するのが適切です。

Q4. 本人の自己評価も必要ですか?→ 有用です。ただし、自己評価だけで配属を決めず、同じ課題による観察結果と組み合わせます。

まとめ

職場日本語のCan-do評価表は、業務場面を洗い出し、条件、行動、達成基準、支援の程度を具体的に書いて作ります。「会話力がある」という印象を、観察できる行動へ変えるものです。

企業独自のCan-doをCEFRやJLPTの公式判定と混同せず、採用、研修、配属で同じ表を使ってください。評価結果から、単独で任せる業務と必要な支援を決めることが目的です。

参考リンク

外国人材の日本語教育を、AIで

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