外国人材の社会保険・労働保険|加入手続と脱退一時金を解説

目次
外国人材の社会保険・労働保険は、国籍を理由に加入対象から外れる制度ではありません。日本年金機構は、適用事業所に常時使用される人は国籍や性別、賃金の額等に関係なく被保険者となるとしています。労災保険は在留資格を問わず労働者に適用されます。
実務で詰まるのは加入の原則よりも、入退社時の切替え、家族の扶養、脱退一時金、社会保障協定です。「いずれ帰国するから厚生年金に入れない」という扱いはできません。
加入基準は原則として日本人と同じ
健康保険・厚生年金保険の適用事業所で常時使用される外国人材は被保険者になります。短時間労働者は、事業所規模、週の所定労働時間、賃金、雇用見込み、学生かどうかで判定します。この要件は段階的に見直されているため、判定時点の基準を確認してください。
本人への説明資料は自作不要です。年金機構が制度案内を14言語で公開しています。
4つの保険を別々に判定する
「社会保険」の一括確認欄だけでは手続漏れが起こります。
| 制度 | 主な確認 |
|---|---|
| 健康保険 | 適用事業所、雇用形態、短時間労働者の要件 |
| 厚生年金保険 | 健康保険と同様の資格、社会保障協定 |
| 雇用保険 | 週20時間以上、31日以上の雇用見込み |
| 労災保険 | 労働者として雇用されているか、事故時の給付 |
雇用保険は、週の所定労働時間20時間以上かつ31日以上の雇用見込みで判定します。31日未満の契約でも、更新規定があって雇止めの明示がなければ原則該当します。例外は出向等で駐在し母国の失業補償制度に加入している人です。税は別制度です。外国人雇用にかかる費用でも混ぜずに見積もります。
入社時は氏名表記と基礎年金番号を確認する
資格取得届は日本人と同じ期限・様式が基本です。外国籍の人は住民票上の氏名、在留カードの表記、個人番号、基礎年金番号を照合し、ローマ字氏名届など追加書類が必要な場合があります。表記が一致しないまま処理すると年金記録が分かれます。過去に日本で就労・留学した人は、新しい番号を作る前に基礎年金番号を確認してください。
雇用保険の資格取得届は雇入れ日の属する月の翌月10日までにハローワークへ提出します。在留カードの確認方法と合わせ、一つの手順にします。
特定技能には専用の書類交付手続がある
年金機構は「特定技能」にかかる社会保険関係の書類交付の手続を別に用意しています。特定技能制度の在留諸申請では保険関係の資料が必要なため、申請直前に取り寄せる想定を置かないでください。
入国直後と離職時は空白期間をつくらない
入国して住民登録をした後、会社の健康保険に入るまで期間があるときは、国民健康保険・国民年金の対象か市区町村で確認します。20歳以上60歳未満で日本に住所があり厚生年金に加入していない人は、原則として国民年金の対象です。
退職して次の会社へすぐ移らない場合も、任意継続、国民健康保険、家族の被扶養者から要件に合う手続きを選びます。資格喪失証明書等は遅滞なく交付します。
本国に残る家族は原則として被扶養者にできない
健康保険の被扶養者には、2020年4月から原則として日本国内に住所がある(住民票がある)ことが要件に加わりました。本国で暮らす家族を、送金を理由に被扶養者にはできません。
例外(海外特例要件)は5つありますが、外国で留学する学生、海外赴任に同行する家族など、いずれも日本国内に生活の基礎があると認められる場合を想定したものです。本人の家族が本国に住み続けているだけでは、通常これに当たりません。続柄や生計維持の要件も別に審査され、判断は保険者が行います。
社会保障協定がない主な送出国もある
社会保障協定の目的は、保険料の二重負担の防止と年金加入期間の通算です。年金機構によると発効しているのは24か国。ただし英国・韓国・中国・イタリアとの協定は二重負担の防止だけで、加入期間の通算は対象外です。
ベトナム、インドネシア、ミャンマー、カンボジア、ネパールは発効済みの協定相手国ではなく、これら5か国の制度と日本の年金加入期間は通算できません。協定の適用は国籍だけで決まらないため、加入歴、派遣関係、適用証明書を確認します。
脱退一時金には6か月以上の加入と2年以内の請求が必要
日本国籍のない人が公的年金の被保険者資格を失い日本に住所がなくなった後、要件を満たすと請求できます。実務で効くのは、加入期間が6か月以上あることと、日本に住所を有しなくなった日などから2年以内に請求することです。
支給額は、厚生年金では被保険者期間の平均標準報酬額に支給率を掛けて計算し、計算に用いる月数の上限は60か月(5年)です。2021年4月より前は36か月でしたが、特定技能1号の在留が最長5年になったことを踏まえ引き上げられました。ただし受給すると、計算の基礎となった年金加入期間はなくなります。会社は受給を約束せず、本人の判断につなぎます。
受入企業自身の法令遵守が受入基準になる
特定技能雇用契約の基準を定める省令第2条第1項第1号は、特定技能所属機関に労働、社会保険及び租税に関する法令の規定を遵守していることを求めています。本人の納付状況とは別に、会社の資格取得・喪失、標準報酬、納付が基準です。
本人の側の納付状況は在留審査で見られます。入管庁のガイドライン(2026年6月最終改正)は、国民健康保険料などに高額・長期の未納があれば悪質なものは消極的に評価するとし、関係機関から提供を受けた情報を踏まえて判断する場合があると明記しました。一方で健康保険証等を提示できないことだけを理由に不許可とすることはないとも書かれています。詳細は在留期間更新の手続を参照します。
入退社時の確認表
- 在留カードと住民票上の氏名表記を照合し、基礎年金番号の重複がないか
- 4保険をそれぞれ適用判定し、雇用保険の届出を翌月10日までに出したか
- 入社前・退社後の空白期間を本人へ案内したか
- 被扶養者の国内居住要件と生計維持を確認したか
- 送出国が協定の相手国かを確認したか
- 帰国者へ脱退一時金の要件と不利益を案内したか
FAQ
Q1. 特定技能外国人は社会保険に入れなくてもよいですか? → いいえ。適用事業所・加入要件に該当すれば日本人と同じ基準で加入します。会社側の社会保険法令の遵守自体が受入基準です。
Q2. 本国に住む家族を健康保険の扶養にできますか? → 原則としてできません。2020年4月から国内居住要件があり、例外は日本国内に生活の基礎があると認められる場合に限られます。
Q3. 脱退一時金はいくら戻りますか? → 加入期間と平均標準報酬額で変わり、計算に用いる月数の上限は60か月です。加入6か月未満は請求できません。
Q4. 社会保険料の未納は在留期間更新に影響しますか? → 納付状況は審査で確認されます。高額・長期の未納で悪質なものは消極的に評価され得ます。
まとめ
外国人材の社会保険・労働保険は原則として日本人と同じ適用基準です。4つの保険を別々に判定し、雇用保険は週20時間・31日以上で見ます。入退社の空白期間をつくらないことが基本です。
本国の家族の扶養には国内居住要件があり、送金だけでは認められません。主な送出国の一部とは加入期間を通算できません。国籍だけで判断せず、加入歴と派遣関係を確認して脱退一時金を説明します。受入企業自身の法令遵守も受入基準です。