採用・受入れ実務

外国人採用にかかる費用の内訳|見積もりで確認すべき項目を整理

外国人採用の費用は、制度、採用経路、分野、委託範囲で変わります。公的機関が示す一般的な「相場」はないため、根拠のない一人当たり金額だけでは比較できません。本記事では具体的な市場相場を断定せず、初期費用・継続費用・更新終了時費用を分け、5年総額で比較する方法を整理します。

費用は3つの時点に分ける

見積もりは、次の3区分で並べ直します。

  • 受入れ前の初期費用:募集、紹介、申請、渡航、住居準備など
  • 受入れ後の継続費用:給与、社会保険、支援・監理、住居、教育など
  • 更新・退職・帰国時の費用:在留手続、住居精算、帰国対応、再採用など

初期費用だけが安くても、月額費用や別料金が多ければ総額は上がります。比較期間と人数をそろえることが先です。

初期費用の内訳

初期費用には、求人・人材紹介、在留資格申請の支援、健康診断、渡航、空港送迎、住居の契約、家具家電、入国前後の教育などがあります。

海外機関が関与するかは一律ではありません。特定技能は、採用国の二国間取決めや採用経路によって現地手続が異なり、国内在住者の採用では海外の送り出し機関を介さないこともあります。技能実習でも、送り出し機関の関与を前提とするのは主に団体監理型です。

「申請費」「渡航費」のような一行表示ではなく、誰への支払いか、実費と代行報酬のどちらか、再申請時の追加費用があるかを確認してください。

見落とされやすいのは住居の初期費用

企業が住居を借り上げて社宅として提供する場合は、敷金・礼金・仲介手数料や家具家電の初期費用を誰が一時負担し、最終的に誰が負担するかを決めます。特定技能1号では、本人が住居を確保していない場合は、希望に基づく物件情報の提供・同行・連帯保証・社宅提供などの住居確保支援も必要です。

本人が自分で契約する前提だけで試算すると、企業による立替えや借上げが必要になったときに初期費用が想定を超えます。退去時の精算や、途中で離職した場合の残存期間の家賃も見積もりに含めてください。

月額費用の内訳

毎月または定期的に発生する主な費用は次のとおりです。

  • 給与、賞与、社会保険料、労働保険料
  • 特定技能1号の支援委託費、技能実習の監理団体へ支払う監理費
  • 社宅の家賃、保証料、通信・光熱関連費
  • 通訳、生活相談、行政・医療機関への同行
  • 日本語教育、業務研修、安全教育
  • 定期面談、監査、届出に要する社内工数

登録支援機関への委託費がなくても、自社支援には法令上の支援体制基準を満たすことが必要で、担当者と通訳の人件費がかかります。外注費と社内工数を同じ表に入れないと、自社支援が無条件に安いという比較になります。

試験合格と事前教育は別問題

特定技能1号は技能試験と日本語試験等で能力を確認します(技能実習2号を良好に修了した場合は試験が免除されるルートもあります)が、合格によって受入企業の準備や教育が不要になるわけではありません。1号特定技能外国人には、在留資格認定証明書の交付申請前または在留資格変更許可の申請前の事前ガイダンスを含む支援計画が必要です。

仕事の用語、安全手順、社内ルールは試験合格だけで保証されません。日本語教育の体制と現場教育の工数も見積もります。

建設分野には公表された固定費がある

一般的な支援・紹介費の相場は公表されていませんが、建設分野の特定技能には業界固有の公表額があります。受入企業は、建設技能人材機構(JAC)の正会員団体の会員になるか、JACの賛助会員になる必要があります。

2026年7月時点で、1号特定技能外国人受入負担金は一人当たり月額12,500円です。賛助会員の年会費は、受入企業および建設関連団体が24万円です。

24万円は受入企業側の額で、登録支援機関には別区分があります。登録支援機関の年会費も原則24万円ですが、契約建設企業の数が20社未満は12万円、10社未満は6万円、5社未満は3万円に軽減されます。なお、登録支援機関のJAC入会は任意で、加入が必要なのは受入企業側です。

正会員団体経由の場合、JAC年会費は不要ですが、各団体の会費は別に確認します。これは市場相場ではなく、JACが公表する制度固有費用です。最新額は必ずJACの会費案内で再確認してください。

本人に負担させられない費用

特定技能1号の支援に要する費用のうち、直接・間接を問わず本人に負担させられないのは、運用要領別冊が定める義務的支援に係るものです。任意的支援まで一律に禁止されているという整理ではないため、委託契約では義務的支援と任意的支援の範囲を分けて確認します。

いずれにしても、支援委託費を給与から控除したり、別名目で徴収したりする運用は避けます。

社宅の家賃等は本人負担にできる場合がありますが、実費相当で合理的な額とし、社宅等の貸与によって企業が経済的利益を得ないことが必要です。支援費と住居実費を混同せず、控除の根拠と本人への説明を残してください。

給与は制度上の要件から外せない

特定技能では、同等の業務に従事する日本人と同等以上の報酬が必要です。技能実習でも、日本人が同種の業務に従事する場合と同等額以上であることが求められます。技術・人文知識・国際業務にも日本人と同等額以上の報酬要件があります。

外国人であることを理由に低い給与を前提とする費用試算は、制度要件に合いません。求人票の基本給だけでなく、手当、控除、所定労働時間、昇給条件まで同じ基準で確認します。

5年総額の比較方法

比較表は、次の式で作ります。

5年総額=初期費用+継続費用60か月分+更新・終了時費用+社内人件費

特定技能1号は原則通算5年(一定の場合は6年まで)、技能実習は最長5年ですが、技能実習は2027年4月に育成就労制度(原則3年)へ移行するため新規受入れでは前提が変わります。在留期間や移行経路は個人ごとに異なります。1年、3年、5年の複数ケースを作り、早期離職時の精算条件も別欄にします。

見積もりで確認する項目

複数社へ同じ様式で、次を回答してもらうと比較できます。

  1. 初期・月額・都度払いの区分
  2. 義務的支援のうち月額に含まれる範囲
  3. 通訳、病院・行政同行、緊急対応の追加料金
  4. 申請、更新、届出、報告書作成の担当者
  5. 住居、渡航、教育の実費と手数料
  6. 最低契約期間、解約、早期離職、再紹介の条件
  7. 消費税、海外送金手数料などの扱い

「すべて込み」ではなく、含まれない項目を明記してもらうことが重要です。

FAQ

Q1. 一人当たりの一般的な相場はいくらですか? → 公的機関が示す一般相場はありません。同じ条件の見積もりを複数社から取り、5年総額と含有項目で比較してください。

Q2. 支援を自社で行えば費用はかかりませんか? → 自社支援には法令上の支援体制基準を満たすことが必要です。委託費はなくせても、担当者、通訳、面談、届出、緊急対応の人件費が発生します。

Q3. 特定技能の支援費を本人負担にできますか? → 義務的支援に要する費用は本人負担にできません。住居費など負担可能な実費とは分けて扱います。

Q4. 建設分野も他分野と同じ費用構造ですか? → JACへの加入と受入負担金があるため異なります。所属団体の会費も含めて確認してください。

まとめ

検証できない市場相場を一人歩きさせるより、初期・継続・終了時に分け、5年総額と含まれる業務をそろえる方が正確です。公表額がある制度固有費用だけを別枠で示し、支援委託費、社内工数、早期離職時の条件まで比較してください。

参考リンク

外国人材の日本語教育を、AIで

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