特定技能「農業」とは?農業・漁業だけで使える派遣と労働時間の特例を解説

目次
特定技能「農業」では、直接雇用に加えて派遣形態を使えます。特定技能で派遣が認められるのは農業と漁業だけです。
一方、農業には労働基準法41条による労働時間・休憩・休日の適用除外があります。深夜割増や年次有給休暇までなくなるわけではありません。派遣の条件と労務管理の範囲を分けて理解する必要があります。
農業は1号・2号の対象分野
農業は特定技能1号の19分野の一つで、特定技能2号の対象でもあります。1号は通算在留期間が原則5年ですが、2号へ移行すれば在留期間の更新回数に上限はありません。
受入れは、農業者による直接雇用と、要件を満たす派遣元による派遣の二つです。
業務区分は耕種農業と畜産農業
1号の業務区分は次の二つです。
- 耕種農業全般:栽培管理、農産物の集出荷・選別など
- 畜産農業全般:飼養管理、畜産物の集出荷・選別など
試験も耕種農業と畜産農業に分かれます。技能実習の細かな職種名と混同せず、受入れ後の主な業務に合う区分を選びます。
農畜産物の製造・加工、運搬、販売、冬場の除雪などは、日本人が通常従事する関連業務として付随的に行えます。加工や販売だけに専従させることはできません。
派遣が認められる理由
農業は作物や地域によって繁忙期が異なり、一つの経営体だけでは年間を通じた作業量を確保しにくい場合があります。派遣であれば、季節に応じて複数の農業者へ派遣し、就労機会をつなげられます。
ただし、一般の派遣会社ならどこでも農業分野の受入れ機関になれるわけではありません。派遣元は、農業または関連業務を行っていることなど、告示で定める要件を満たす必要があります。
派遣元と派遣先の双方を確認する
派遣形態では、特定技能雇用契約を結ぶのは派遣元です。農業者は派遣先として、実際の作業指示と安全衛生管理を担います。
在留諸申請では派遣元と派遣先の双方に関する誓約書が必要です。受入れ前に、次を確認してください。
- 派遣元が農業分野の要件を満たすか
- 派遣先ごとの業務が耕種または畜産の区分に合うか
- 派遣期間外も雇用と報酬を安定させられるか
- 住居、移動、支援の担当が曖昧になっていないか
派遣先が変わるたびに生活拠点まで頻繁に移す運用は、本人の負担にもなります。
労基法41条で適用除外となる範囲
農業、畜産、養蚕などの事業に従事する労働者には、労働基準法の労働時間、休憩、休日の規定が適用されません。法定労働時間を超えたことだけを理由とする時間外割増や、法定休日割増も原則として生じません。
ただし、次は別です。
- 午後10時から午前5時までの深夜割増賃金
- 年次有給休暇
- 労働条件通知書や雇用契約で定めた所定労働時間、休憩、休日
- 最低賃金、安全衛生、労災保険などの規定
適用除外は長時間労働を無制限に認める制度ではありません。 農水省も、特定技能外国人の労働条件について労基法の規定に準拠する運用を示しています。
繁忙期と閑散期を契約に反映する
繁忙期だけ所定時間を大きく超え、閑散期に仕事がない契約では、収入が不安定になります。年間の作業計画、月ごとの所定労働日数、休日、天候で休業する場合の扱いを事前に説明してください。
外国人本人が理解できる言語で説明し、実際の勤怠も記録します。法定時間外割増が生じない場合でも、雇用契約に定めた手当を支払う必要があります。
1号と2号の試験
1号は、全国農業会議所が行う1号農業技能測定試験の耕種農業または畜産農業と、JFT-BasicまたはJLPT N4以上が基本です。
関連する技能実習2号を良好に修了した場合は技能試験が免除されます。日本語試験は、職種を問わず技能実習2号を良好に修了していれば免除されます。
2号では2号農業技能測定試験に加え、複数の従業員を指導しながら工程を管理した2年以上の経験、または農業現場での3年以上の実務経験が必要です。
農業特定技能協議会へ加入する
受入れ機関は、在留諸申請の前に農業特定技能協議会へ加入します。
- 入会費や年会費はかからない
- 加入通知書の送付までおおむね2週間
- 加入後は所在地を管轄する地域協議会にも自動加入
- 登録支援機関は加入対象外
加入通知書は後の申請でも使うため保管してください。分野によって協議会の対象者や所要期間は異なります。
住居と移動手段も受入れ条件になる
農地が市街地から離れている場合、通勤、買物、通院、行政手続の移動手段が必要です。社用車での送迎、自転車の安全な利用、公共交通の時刻まで確認します。
外国人労働者の生活課題を都市部と同じ前提で考えず、派遣先が変わる場合も支援を継続できるか確認してください。
FAQ
Q1. 特定技能で派遣を使えるのは農業だけですか? → 農業と漁業の2分野です。それ以外は原則として直接雇用です。
Q2. 耕種と畜産の両方を担当できますか? → 主な業務に対応する試験区分が必要です。複合経営での関連作業はあり得ますが、別区分の業務だけに従事させることはできません。
Q3. 農業は残業代を払わなくてよいのですか? → 労基法41条により労働時間・休憩・休日の規定は適用除外ですが、深夜割増や契約上の手当は別です。
Q4. 年次有給休暇も適用除外ですか? → いいえ。年次有給休暇は適用されます。
Q5. 協議会の加入に費用はかかりますか? → 入会費や年会費はかかりません。加入通知書の送付はおおむね2週間と案内されています。
まとめ
農業では、漁業とともに派遣形態が認められます。派遣元だけでなく、派遣先ごとの業務、労務管理、住居と移動手段を確認してください。
労基法41条で適用除外となるのは労働時間・休憩・休日です。深夜割増、年次有給休暇、契約上の労働条件までなくなるわけではありません。