日本語研修は労働時間になる?賃金・残業・費用負担を解説

日本語研修が労働時間になるかは、勤務時間内か時間外か、オンラインか対面かでは決まりません。基準は、研修中の社員が会社の指揮命令下に置かれているかです。
会社が参加を指示し、不参加では業務を担当できない、評価上の不利益があるなど、事実上参加を義務づけている研修は労働時間に当たる可能性が高いと考えます。名称を「自己学習」「任意研修」に変えても、実態で判断されます。
労働時間は指揮命令下にある時間
厚生労働省のガイドラインは、労働時間を「使用者の指揮命令下に置かれている時間」とし、使用者の明示又は黙示の指示により業務に従事する時間が労働時間に当たるとしています。
同ガイドラインは、労働時間に当たるかどうかは労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんによらず客観的に定まると明記しています。労働者の行為が使用者から義務づけられ、又はこれを余儀なくされていた状況があったかで個別に判断されます。就業規則に「自己啓発」と書けば労働時間から外れる、という関係にはありません。
研修・教育訓練については、業務上義務づけられていない自由参加のものは労働時間に当たらない一方、不参加が就業規則上の減給処分の対象とされている、不参加によって業務を行うことができないなど、事実上参加を強制される場合は労働時間に当たると示されています。
外国人社員の日本語研修にも同じ基準が適用されます。研修内容と自社業務の関連性も個別に確認します。
労働時間になりやすい研修
次のような事情がある場合は、労働時間として扱う方向で確認が必要です。
- 上司が受講を指示している
- 受講しないと配属や担当業務に就けない
- 不参加が評価、賃金、契約更新等の不利益につながる
- 出席、進捗、課題提出、修了期限を会社が管理している
- 自社の安全指示や業務手順を学ぶ内容である
- 指定された場所・時間に参加しなければならない
職場日本語研修の計画時に、学習内容と労働時間の取扱いを同時に決めてください。
労働時間にならない可能性がある研修
厚生労働省は、自由参加の研修について労働時間としない取扱いが考えられる例を示しています。ただし「自由参加」と案内するだけでは足りません。
- 参加するか本人が自由に選べる
- 不参加による不利益がない
- 会社から課題、期限、進捗報告を求められない
- 学習場所と時間を本人が決められる
自宅でオンライン教材を使う場合も同じです。会社が修了期限を指定し、進捗を毎日確認し、未修了者へ受講を命じていれば、「自宅学習だから労働時間外」とは言い切れません。
語学研修の例は、業務との関連性が条件になっている
厚生労働省は、労働時間に該当しない事例として「会社が外国人講師を呼んで開催している任意参加の英会話講習」を挙げています。ただしこの事例には、「なお、英会話は業務とは関連性がない」という条件が付いています。
この例から、任意参加の語学研修がすべて労働時間外になるとはいえません。外国人社員向けというだけで業務関連性が決まるわけでもなく、研修の目的と内容で判断します。 安全指示、作業手順、報告、記録を扱うなら、自社業務との関連性を慎重に確認してください。
労働時間としない場合に会社が整えること
厚生労働省は、研修を労働時間に該当しないものとして扱う場合、次を労使であらかじめ確認しておくよう示しています。
- 上司がその研修を行うよう指示していないこと
- 開始時点で本来業務と、それに不可欠な準備・後処理が終了していること
- 労働者がそれらの業務から離れてよいこと
さらに、通常の勤務場所とは異なる場所で行うことなど、通常勤務と外形的に区別し、実施手続を書面で明確化することが望ましいとされています。
勤務時間外なら残業にならないとは限らない
労働時間に当たる研修を所定労働時間外に行えば、労働時間として把握し、賃金を支払う必要があります。法定労働時間を超える場合は、時間外労働や割増賃金の確認も必要です。
受講システムの履歴だけに頼らず、会社が求めた学習時間、集合研修、面談、課題対応を確認してください。判断が難しい場合は、社会保険労務士や所轄の労働基準監督署へ相談します。
特定技能の義務的支援と社内研修を分ける
特定技能の日本語学習支援は生活に必要な日本語の学習機会を提供する義務的支援で、会社固有の業務日本語研修とは別のものです。本人が案内された地域教室へ自主的に通う時間が、当然に労働時間になるわけではありません。反対に、会社が参加を業務命令として扱い、出席を管理し、不参加に不利益を設ければ、労働時間性を別途判断します。制度上の支援名ではなく運用実態を見ます。
費用負担も項目ごとに分ける
1号特定技能外国人への義務的支援に要する費用は、直接または間接に本人へ負担させてはなりません。一方、日本語教室等の入学金・月謝や教材費への経済的支援は任意的支援として例示されており、すべての学習費が一律に会社負担となるわけではありません。区分は特定技能の日本語学習支援で解説しています。
社内の業務研修費を本人へ負担させる場合は、賃金控除や返還条項など別の労務上の問題が生じます。独自判断で控除せず、契約前に専門家へ確認してください。
研修計画に取扱いを明記する
研修ごとに次を一覧にします。各欄は案内文ではなく実際の運用で埋めてください。
| 確認項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 目的 | 試験、生活、業務、安全のどれか |
| 参加 | 必須か、本人が選択できるか |
| 指示者 | 誰が受講・課題を指示するか |
| 時間 | 勤務表へどう組み込むか |
| 賃金 | 通常時間・時間外の扱い |
| 費用 | 会社・本人の負担項目 |
| 記録 | 出席、課題、実労働時間の管理者 |
「任意」と書きながら、上司が毎週未受講者を呼び出す運用なら、書面だけで自由参加とは評価されません。
労働時間に当たることを避けるために、すべて本人の休日へ移すのも適切な解決ではありません。入社後の受入れ実務の段階で、現場責任者、人事、支援担当者が、受講できる勤務帯、代替要員、振替、補講を決めます。会社が必要とする研修なら、その時間も含めて業務設計を行ってください。
FAQ
Q1. 就業後のオンライン日本語研修は労働時間ですか?→ 時間帯だけでは決まりません。会社の指示、業務との関係、期限、進捗管理、不参加時の不利益から、指揮命令下にあるかを判断します。
Q2. 任意参加と書けば労働時間になりませんか?→ 書くだけでは決まりません。就業規則等の定めではなく、実際に断れるか、不参加による不利益がないかなどから客観的に判断されます。
Q3. 厚労省は任意参加の英会話講習を労働時間ではないとしていますが、日本語研修も同じですか?→ 一律にはいえません。その事例には「英会話は業務とは関連性がない」という条件があります。日本語研修も目的・内容と自社業務の関連性を個別に判断します。
Q4. 日本語研修費を給与から控除できますか?→ 義務的支援費の本人転嫁はできません。その他の研修費も、賃金控除や返還条件を独自に決めず、契約内容を専門家へ確認してください。
まとめ
日本語研修が労働時間になるかは、実施場所や名称ではなく、会社の指揮命令下にあるかで客観的に判断されます。労働時間に当たる研修は賃金と時間外労働を管理し、労働時間としない扱いにするなら、指示の有無、本来業務からの解放、場所や手続の明確化まで整えてください。
特定技能の義務的支援、任意の学習、会社固有の業務研修を分け、参加、時間、賃金、費用、記録を研修計画に明記することが重要です。