制度解説

外国人の同等報酬要件とは?特定技能・技能実習・技人国の賃金比較を解説

特定技能・技能実習・技術・人文知識・国際業務には、いずれも日本人と同等額以上の報酬を求める基準があります。ただし、単に同じ会社の日本人と月給を比べればよいわけではありません。職務内容、責任、技能や経験が比較できる相手を定め、金額差の理由まで説明できる状態が必要です。本記事では、制度ごとの文言と様式の違いを踏まえ、受入企業が残す資料を整理します。

同等報酬要件は最低賃金とは別の基準

最低賃金は、使用者が下回れない賃金の下限です。同等報酬要件は、その下限を守ったうえで、外国人であることを理由に日本人より低い報酬を設定していないかを確認する基準です。

したがって、地域別最低賃金を上回っているだけでは同等報酬の説明になりません。 労働基準法第3条も、国籍を理由とする賃金その他の労働条件の差別的取扱いを禁じています。

3制度で条文の文言と立証方法が異なる

制度 根拠と文言の要点 公式の説明様式
特定技能 基準省令第1条第1項第3号「日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上」 参考様式第1-4号
技能実習 技能実習法第9条第9号「日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上」 参考様式第1-16号
技術・人文知識・国際業務 上陸基準省令の基準「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上」 専用の比較説明書は確認できない

文言は近くても、提出書類まで共通ではありません。在留資格の違いを無視して、1枚の社内資料をそのまま全制度の申請書に置き換えないでください。

特定技能は参考様式第1-4号で説明する

特定技能の参考様式第1-4号「特定技能外国人の報酬に関する説明書」では、本人と比較対象となる日本人について、役職・職務内容・責任の程度、年齢・経験年数、報酬を記載します。同程度の技能を持つ日本人がいる場合は、両者の業務と責任が同等であることを示し、日本人の報酬以上であることを説明します。

特定技能運用要領は、技能実習2号修了者をおおむね3年、3号修了者をおおむね5年の経験者として扱う必要があるとしています。技能実習時の賃金を据え置くだけでは足りません。 入管庁の質疑応答でも、特定技能1号は少なくとも技能実習2号の給与水準を上回ることが想定されています。

技能実習は参考様式第1-16号で比較する

技能実習制度では、技能実習計画の認定申請に参考様式第1-16号「技能実習生の報酬に関する説明書」を用います。現行様式は、同程度の技能を持つ日本人の有無、比較対象または最も近い職務を担う日本人の職務・責任、年齢・経験年数、報酬、同等以上と考える理由を記載する構造です。

月給と時間給を混ぜると比較できないため、様式はどちらかに換算して統一するよう求めています。第2号・第3号では、前段階の技能実習の報酬も記載します。技能の習熟が進んでも報酬が変わらない設計なら、段階ごとの説明を再点検してください。

技人国には同じ専用様式がない

技術・人文知識・国際業務も、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上が上陸基準です。入管庁の現行案内は、労働契約を結ぶ場合の資料として労働条件を明示する文書を挙げています。

一方、特定技能の参考様式第1-4号に相当する専用比較様式は、確認した公式案内にはありません。したがって、特定技能の記載欄を技人国の一律の提出要件と断定することはできません。申請区分や個別事情に応じて追加説明を求められる可能性を見込み、職務記述書、労働条件通知書、賃金規程、同等職位の給与決定根拠を準備しておくのが安全です。

比較対象は金額から選ばない

先に給与額が近い人を探すのではなく、次の順序で比較対象を絞ります。

  1. 実際に担当する業務の範囲
  2. 判断権限、指導役の有無など責任の程度
  3. 業務に関する技能と経験年数
  4. 職位、勤務形態、賃金等級

年齢や勤続年数だけが同じでも、職務と責任が違えば適切な比較とは限りません。反対に、報酬差があっても、職務範囲や責任、経験の差と賃金規程に照らして合理的に説明できる場合があります。

比較できる日本人がいない場合

特定技能では、賃金規程があれば社内の報酬体系から説明し、なければ最も近い職務の日本人との差を職務・責任の観点から説明するのが運用要領の考え方です。

技能実習の公式記載例は、同程度の日本人も賃金規程もない農業事業者について、近隣の同種求人を根拠にし、求人票の写しを添付する例を示しています。これは技能実習の記載例です。技人国にも同じ証明方法が当然に認められると一般化せず、比較対象が社内にいない場合は申請先へ確認してください。

申請前にそろえる資料

社内では、少なくとも次の資料を同じ基準日でそろえます。

  • 本人と比較対象者の職務記述書
  • 雇用契約書・労働条件通知書
  • 賃金規程、等級表、昇給基準
  • 基本給と手当の内訳、月給・時間給の換算表
  • 比較対象を選んだ理由と差額の説明書

特定技能と技人国では、通勤手当など実費弁償の性格を持つものは原則として「報酬」に含まれません。手当を足して同等額に見せるのではなく、何を比較額に含めたかをそろえてください。

賃金台帳は採用後の整合確認に使う

労働基準法第108条により、使用者は労働者ごとに賃金台帳を作成します。同等報酬の説明書が採用時の設計を示すのに対し、賃金台帳は実際の支払いを示す記録です。

採用後は、外国人と比較対象者の基本給、手当、昇給、時間外割増を同じ時点で確認します。雇用条件書には同等額を記載していても、昇給の反映漏れや手当の対象外運用で差が生じれば、説明と実態が一致しません。外国人採用の全体手順に賃金確認の担当者と確認時期を組み込んでください。

FAQ

Q1. 外国人と日本人は必ず同じ月給にしなければなりませんか? → 必ず同額という意味ではありません。職務、責任、技能、経験などを比較し、差がある場合は賃金規程に沿った合理的な理由を説明できることが重要です。

Q2. 比較対象の日本人が社内にいない場合は採用できませんか? → 直ちに採用不可とはなりません。特定技能は賃金規程や最も近い職務との比較、技能実習は公式様式と記載例に沿って説明します。技人国は個別に申請先へ確認してください。

Q3. 最低賃金を上回れば同等報酬要件を満たしますか? → それだけでは足りません。最低賃金の遵守と、日本人が従事する場合の報酬との比較は別に確認されます。

Q4. 賃金台帳を申請時に必ず提出しますか? → 制度や申請区分により提出書類は異なります。賃金台帳は実際の支払いと申請時の説明が一致しているかを確認できるよう、法令に従って作成・保存してください。

まとめ

同等報酬要件は、外国人の給与を一律に日本人と同額にするルールではありません。適切な日本人を比較対象に選び、職務・責任・技能・経験と賃金規程から、同等以上であることを説明する基準です。

特定技能は参考様式第1-4号、技能実習は参考様式第1-16号に沿って立証します。技人国には同じ専用様式が確認できないため、制度間で提出方法を一般化しないことが重要です。申請資料と採用後の賃金台帳をつなぎ、説明と支払いの不一致を防いでください。

参考リンク

外国人材の日本語教育を、AIで

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