外国人雇用の監査・実地検査に備える|企業が残すべき記録

目次
外国人雇用の監査・実地検査は、直前に書類を作る対応では乗り切れません。計画上の業務と実態、勤務記録と賃金、支援記録と本人の説明が一致しているかを見られるためです。
2027年4月に始まる育成就労では、監理支援機関の監査と外国人育成就労機構の実地検査があります。特定技能では、出入国在留管理庁の報告徴収や実地調査があります。誰が何の根拠で確認するのかを分け、同じ原資料から説明できる状態を作ってください。
監査・実地検査・報告徴収は別の手続
監理型育成就労では、監理支援機関が受入企業である育成就労実施者を定期的に監査します。機構は、育成就労実施者や監理支援機関に報告・帳簿の提出を求め、設備や帳簿書類を実地に検査できます。
一方、特定技能には監理支援機関による監査はありません。出入国在留管理庁が特定技能所属機関や登録支援機関を調査し、違反があれば指導・助言、改善命令などへ進む仕組みです。技能実習・育成就労・特定技能の違いを前提に、制度名を混ぜないでください。
監理支援機関の定期監査は3か月に1回以上
育成就労制度運用要領では、監理支援機関は育成就労実施者に対し、3か月に1回以上の定期監査を行います。原則として、次の方法が必要です。
- 育成就労の実施状況を現地で確認する
- 育成就労責任者・育成就労指導員から報告を受ける
- 育成就労外国人の4分の1以上と面談する
- 事業所の設備と帳簿書類を確認する
- 宿泊施設などの生活環境を確認する
2人以上4人以下を受け入れている場合、面談対象は2人以上です。監査後、監理支援機関は監査日から2か月以内に監査報告書を機構へ提出します。
書面だけでなく現場と本人の説明を照合する
定期監査では、割増賃金の不払い、労働時間の偽装、二重帳簿、計画外の業務、他社での就労、人権侵害などが重点例として示されています。
認定された育成就労制度の計画に正しい業務名があっても、現場で別の作業だけをさせていれば適正とはいえません。勤怠表、作業日誌、配置表、本人面談の説明を日付単位で突き合わせます。監査日に合わせて説明を作らず、日常の記録をそのまま示せる形にします。
機構の実地検査は監理支援機関にも及ぶ
外国人育成就労機構(現在の外国人技能実習機構を改組)は、育成就労実施者と監理支援機関等に対し、報告や帳簿書類の提出・提示、質問、設備・帳簿の実地検査を行えます。定期的な実地検査に加え、申告や問題の把握を契機とする確認も想定されます。
虚偽の回答や検査への不協力は、計画認定の取消しなどにつながり得ます。違反が確認されれば指導を受け、改善命令に至った場合は期日までに措置を講じ、改善報告書を提出します。重大・悪質な違反は行政処分や罰則の対象になり得るため、「監理支援機関が対応するから企業は同席だけ」という整理はできません。
特定技能は入管庁の調査・処分を想定する
特定技能所属機関には、雇用契約、支援計画、届出、分野別基準を守る義務があります。出入国在留管理庁は実地調査を行い、必要に応じて報告や資料を求めます。
2025年4月以降、定期届出は四半期ごとから年1回へ変わりましたが、記録を年1回作ればよいという意味ではありません。雇用契約の変更、受入れ困難、支援計画や委託契約の変更などは随時届出の対象です。届出義務と日常記録を結び付けてください。
雇用・賃金は原資料を月ごとにそろえる
雇用関係では、少なくとも次を月ごとに対応させます。
- 雇用契約書、雇用条件書、本人への説明記録
- 出勤簿、打刻記録、時間外・休日労働の申請
- 賃金台帳、給与明細、振込記録
- 控除の根拠、社会保険・労働保険の手続
- 配置表、作業日誌、業務指示
「総額は合っている」だけでは、割増賃金や控除の適否を説明できません。勤務場所や業務区分が変わった日も残し、在留・計画上の変更手続と対応させます。
育成と日本語学習は実施内容まで残す
育成就労では、試験合格だけでなく、認定計画に沿った技能育成と日本語能力向上が求められます。教材名や受講時間の一覧だけでなく、実施日、担当者、学習内容、出欠、理解確認、再指導、試験結果を記録します。
作業現場では、育成就労日誌、指導担当者、担当工程、習得状況を対応させます。日本語学習計画の目標を変更した場合も、理由、本人への説明、計画変更の要否を記録してください。
支援・相談は「対応した証拠」を残す
相談記録には、相談日、使用言語、相談者、内容、対応、完了日、外部機関への連絡を残します。本人の署名だけを得るのではなく、理解できる方法で説明したことが分かる資料が必要です。
住居、医療、安全、妊娠・出産、ハラスメント、転籍希望などは、問題が起きてから一枚の報告書へまとめないでください。初回相談から是正確認までを時系列で残します。旅券や在留カードを会社が保管していないことも、社内ルールと本人確認で説明できるようにします。
指摘を受けた後の是正記録も検査対象になる
口頭で直しただけでは、是正が完了したか確認できません。指摘事項ごとに、原因、応急対応、恒久対応、責任者、期限、本人への説明、再発確認を記録します。
監理支援機関が指導した場合は、企業の回答と証拠資料をひも付けます。労働基準監督署、入管庁、機構、分野別協議会など複数機関から指摘を受けたときも、別々の回答で矛盾が生じないよう一つの是正台帳で管理します。
保管場所と閲覧権限を決める
監理支援機関は、実施者・外国人の管理簿、監理支援費、職業紹介、監査報告、指導、講習、相談などの帳簿を事業所に備え、対象の育成就労終了日から1年間保管します。
ただし、雇用・税・社会保険など別法令により、さらに長い保存が必要な書類があります。すべてを1年で廃棄してはいけません。企業は書類ごとの保存根拠、原本の所在、閲覧権限、更新担当者を一覧にし、個人情報を必要な範囲で提示できるようにします。
FAQ
Q1. 監理支援機関の監査は書類をオンラインで送れば終わりますか? → 原則として実地確認、担当者からの報告、本人面談、設備・帳簿、生活環境の確認が必要です。訪問をオンラインだけで置き換える前提にはできません。
Q2. 育成就労の定期監査は年1回ですか? → いいえ。監理支援機関による定期監査は3か月に1回以上です。監査報告書は監査日から2か月以内に機構へ提出します。
Q3. 特定技能の定期届出が年1回なら、月次記録は不要ですか? → 必要です。賃金、労働時間、支援の実態は日々・月ごとの原資料で確認されます。変更や受入れ困難などの随時届出も別にあります。
Q4. 登録支援機関へ全部委託すれば、企業は調査対応を任せられますか? → 企業自身の雇用契約、労務管理、分野別基準の義務は残ります。委託先の支援記録と自社の記録を照合して提示できる状態が必要です。
まとめ
育成就労では監理支援機関の定期監査と機構の実地検査、特定技能では入管庁の調査・報告徴収があります。確認主体は異なっても、計画、現場、賃金、支援、本人の説明が一致するかが基本です。
雇用・勤怠・賃金、担当業務、育成・日本語、相談、届出、是正を時系列で残してください。監査直前の書類作りではなく、月次照合と是正台帳を通常業務に組み込むことが最も確実な備えです。