制度解説

外国人社員の税金と年末調整|居住者・非居住者の判定と扶養控除を解説

外国人社員の給与計算は、所得税法上の居住者か非居住者かの判定から始まります。国籍や在留資格だけでは決まりません。区分を誤ると、源泉徴収、年末調整、扶養控除の扱いが連鎖して変わります。本国の親族を扶養に入れる場合は、国内親族にはない書類も必要です。

外国人社員の税務は4段階で確認する

  1. 入国日、雇用期間、住居、家族の所在から居住者性を判定する
  2. 区分に応じた方法で毎月の所得税を源泉徴収する
  3. 居住者のうち対象者について年末調整を行う
  4. 国外親族の控除書類、租税条約、住民税を個別に確認する

在留カードの在留期間を、そのまま税務上の居住期間と読み替えることはできません。 在留カードの確認方法と税務判定は別の手続として記録してください。

居住者と非居住者の定義

居住者は、国内に住所がある人、または国内に引き続き1年以上居所がある人です。それ以外が非居住者です。住所は生活の本拠であり、住民票や国籍だけでは決まりません。

国内で継続して1年以上住むことを通常必要とする職業に就いた人は、国内に住所があると推定されます。国税庁は、入国から出国までがちょうど1年で、その後の滞在を予定しない技能実習生を一般に非居住者とする事例も示しています。

「1年契約だから必ず居住者」と処理せず、入国日、更新予定、住居や生計関係を保存して判定します。就労できる在留資格の全体像とも切り分けてください。

居住者の給与は通常の源泉徴収へ

居住者の給与は、扶養控除等申告書の提出状況などに応じ、源泉徴収税額表で毎月の税額を計算します。外国籍だけを理由に非居住者用の税率を適用してはいけません。

日本国籍がなく、過去10年以内の国内居住期間が合計5年以下の居住者は「非永住者」に該当する場合があります。これは国外源泉所得の課税範囲に関わり、国内勤務の給与を非居住者扱いに変える区分ではありません。 国外所得がある場合は専門家へ確認します。

非居住者の20.42%は国内勤務分が対象

非居住者の給与のうち、国内勤務に対応する国内源泉所得は、原則20.42%で源泉徴収します。通常の給与所得控除や扶養控除を月々の計算に適用する処理ではありません。

ただし、非居住者への給与全額に20.42%を掛ける、という説明も不正確です。 国内外の双方で勤務した場合は、原則として国内勤務部分を区分します。国外勤務分や内国法人の役員報酬には別の扱いがあるため個別確認が必要です。

海外口座への支払でも、国内に事務所などを持つ支払者が国内源泉所得を支払えば、源泉徴収が必要になることがあります。口座所在地ではなく勤務場所と所得の性質で判断します。

居住者の年末調整

年末調整は、源泉徴収税額と年税額の差を精算する手続です。原則、扶養控除等申告書を提出し年末まで勤務する居住者などが対象で、給与総額が2,000万円を超える人などは対象外です。

中途入社者の前職給与は、源泉徴収票で確認できなければ年末調整できません。入国、帰国、契約変更があれば、採用時の区分を固定せず再判定する運用が必要です。

本国親族の扶養控除は書類が増える

国外居住親族の扶養控除等には、親族関係書類と送金関係書類などの提出または提示が必要です。外国語書類には和訳文も要ります。

  • 親族関係書類:外国政府などが発行し、氏名、生年月日、住所などで親族関係を示す書類
  • 送金関係書類:本人から国外親族へ生活費や教育費を支払ったことを示す金融機関などの記録

送金は親族ごとに確認します。複数人分を代表者1人へまとめた記録だけでは、各人への支払を示せない場合があります。送金者、受取人、対象年、各人への金額を確認してください。

30歳以上70歳未満には追加条件がある

2023年分以後、30歳以上70歳未満の国外居住親族の扶養控除には、通常の所得要件などに加え、次のいずれかが必要です。

  • 留学により国内に住所と居所がなくなり、留学ビザ等書類を提出または提示できる
  • 障害者に該当する
  • その年に生活費または教育費として38万円以上の支払を本人から受けている

該当しない同年齢層は対象外です。16歳以上30歳未満または70歳以上は、親族関係書類と送金関係書類を基本に確認します。配偶者控除、特定親族特別控除、障害者控除は書類の組合せが異なります。

2026年分は年末調整様式を更新する

2026年度税制改正では、基礎控除、給与所得控除の最低保障額、扶養親族等の所得要件が変わりました。原則2026年12月1日施行で、同年11月までの源泉徴収事務は変わりません。12月の年末調整は改正後の計算と様式を使います。

前年様式を複製せず、国税庁の2026年分様式、給与計算設定、国外親族の所得見積額の確認欄を更新してください。

租税条約は国籍だけで適用しない

租税条約により、短期滞在者などの国内源泉所得が免除・軽減される場合があります。対象所得、滞在日数、雇用主、費用負担は条約ごとに異なり、「183日以内なら免税」と一律に案内できません。

適用を受ける場合は原則、支払日の前日までに届出書などを支払者経由で所轄税務署へ提出します。遅れた場合の還付請求も支払者を通じます。最初の給与計算前に条約と必要書類を確認してください。

住民税は市区町村の手続も確認する

個人住民税は前年所得を基礎とし、1月1日の住所地市区町村が課税・徴収します。給与所得者は原則、企業が特別徴収します。所得税の居住者判定や年末調整とは別の手続です。

退職、転勤、帰国が決まったら、異動届と残税額の徴収方法を市区町村へ確認します。社会保険は別制度なので、外国人労働者の医療・保険制度と混同しないでください。

FAQ

Q1. 在留期間が3年なら、入国日から居住者ですか? → 在留期間だけでは決まりません。住所、就労予定、契約、家族や住居などの客観的事実で判定します。

Q2. 非居住者の給与には必ず20.42%を掛けますか? → 国内勤務に対応する国内源泉所得が原則の対象です。国外勤務分や内国法人の役員は扱いが異なります。

Q3. 本国の家族への現金手渡しは送金関係書類になりますか? → 本人から各親族へ支払ったことを明らかにできる書類が必要です。申告だけで処理せず国税庁の書類要件を確認します。

Q4. 租税条約の届出は年末調整時でよいですか? → 原則は対象給与の支払日の前日までです。遅れた場合は支払者を通じた還付請求を確認します。

まとめ

外国人社員の税務は、国籍ではなく居住者・非居住者の判定を起点にすることが重要です。20.42%は非居住者の国内勤務対応分が対象で、居住者の対象者には年末調整を行います。

本国親族は親族関係と各人への送金を確認します。2023年以後の年齢要件、2026年分改正、租税条約、住民税を分け、採用・異動・年末に記録を更新してください。

参考リンク

外国人材の日本語教育を、AIで

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