制度解説

育成就労の転籍とは?技能実習でできなかった転職が認められる条件を解説

育成就労では、本人の意向による転籍が一定の条件で認められます。技能実習にはなかった仕組みで、受入企業には人材が移るリスクと、転籍者を受け入れる機会の両方が生まれます。

本人意向の転籍と、人権侵害などのやむを得ない事情による転籍は要件が異なります。二つを分けて確認してください。

技能実習との違い

技能実習でも、暴力、重大な契約違反、事業継続困難などのやむを得ない事情があれば実習先を変更できます。しかし、より条件のよい会社へ移りたいという本人の希望だけでは変更できませんでした。

育成就労は人材育成と人材確保を目的とし、本人意向の転籍を新設します。技能実習との違いの中でも、労働者としての権利に直結する変更です。

本人意向による転籍の主な条件

本人と転籍先は、主に次を満たす必要があります。

  • 転籍前と同一の業務区分である
  • 直近の受入企業で転籍制限期間を超えて就労している
  • 分野別の技能試験と日本語試験に合格している
  • 育成就労を3年超に延長している者ではない
  • 制度で認められない職業紹介や募集情報提供を利用していない
  • 転籍先が優良な育成就労実施者である
  • 転籍先の本人意向転籍者割合が上限内である
  • 転籍先が転籍元へ所定額を支払う

日本語水準は、A1相当以上から特定技能1号への移行水準までの範囲で分野別に定められます。育成就労の日本語要件で自社分野を確認してください。

転籍制限期間は1年または2年

分野別運用方針は、本人意向の転籍までの期間を1年または2年に定めています。

2年は、介護、建設、造船・舶用工業、自動車整備、工業製品製造業、飲食料品製造業、外食業、資源循環の8分野です。残る9分野は1年です。

2年の分野でも、受入企業が育成就労計画で1年を選べます。1年を超える制限期間を選ぶ場合は、1年経過後に昇給などの待遇向上を行う必要があります。

再転籍でも期間の経過が必要

一度転籍した人が再び本人意向で転籍する場合も、直近の受入企業で分野別の転籍制限期間を超えて就労する必要があります。

最初の受入企業で1年働いた実績を、そのまま次の会社での期間要件に使う仕組みではありません。受入れる側は、残りの育成期間と再転籍までの期間を確認します。

職業紹介を行える主体は限定される

本人意向の転籍で利用できる職業紹介は、監理支援機関、外国人育成就労機構、ハローワーク、地方運輸局など制度で認められた主体に限られます。

一般の有料職業紹介事業者や、制度で認められない募集情報提供事業者を介すると、転籍先の要件を満たしません。監理支援機関を中心に、正規の経路を使います。

やむを得ない事情による転籍は別

省令は、主に次の事情を定めています。

  • 本人の都合以外の理由で育成就労を続けられない
  • 雇用契約について受入企業に重大な違反がある
  • 暴行、脅迫、自由の制限などの人権侵害がある
  • 出入国・労働法令に関する不正または著しく不当な行為がある

この場合、本人意向転籍の転籍制限期間、技能・日本語水準、転籍先の優良要件は適用されません。一方、入管庁Q&Aは、いずれの転籍も同一業務区分内に限ると説明しています。

やむを得ない事情による転籍者は、後述する本人意向転籍者割合の分母・分子から除かれます。

転籍者割合は通常の人数枠とは別

転籍先では、今回の転籍者を含めて次を計算します。

本人意向による転籍者の総数 ÷ 育成就労外国人の総数

この割合が3分の1を超えてはなりません。これは常勤職員数に応じた通常の受入れ人数枠とは別の制限で、両方を満たす必要があります。

さらに、指定区域外の大都市圏等にある機関が指定区域内の地方から受け入れる本人意向転籍者は、総数の6分の1以下です。ただし転籍後の育成就労外国人が6人未満の小規模な機関は、3分の1を満たす範囲で1人まで受け入れられます。

転籍先から転籍元へ費用を支払う

本人意向による転籍では、転籍先が転籍元へ、取次ぎと育成に係る初期費用の一部を支払います。基本式は、主務大臣の告示額に在籍期間ごとの率を掛けた額です。

  • 1年以上1年6か月未満:6分の5
  • 1年6か月以上2年未満:3分の2
  • 2年以上2年6か月未満:2分の1
  • 2年6か月以上:4分の1

2026年7月29日時点で、計算の基礎となる告示額は確認できません。按分率だけで金額を見積もらず、告示の公表後に受入れ費用へ反映してください。

転籍を妨げることはできない

受入企業が試験受験を妨げたり、転籍の申出を理由に解雇などの不利益な取扱いをしたりすることは禁止されています。日本語教育を行わないことも、育成終了と特定技能1号移行を妨げます。

実務上の対策は、転籍制限ではなく、処遇、教育、安全、相談対応を整えて選ばれる職場にすることです。生活上の課題も定着施策に含めます。

FAQ

Q1. 本人の希望だけでいつでも転籍できますか? → できません。転籍制限期間、技能・日本語、同一業務区分、転籍先の要件などを満たす必要があります。

Q2. 転籍できるまで何年ですか? → 分野ごとに1年または2年です。再転籍でも直近の受入企業で期間の経過が必要です。

Q3. 人材紹介会社に紹介してもらえますか? → 一般の有料職業紹介事業者は利用できません。制度で認められた主体を利用します。

Q4. 転籍者は何人まで受け入れられますか? → 本人意向転籍者が育成就労外国人総数の3分の1を超えないことが基本です。通常の人数枠も別に満たします。

Q5. 人権侵害がある場合も1年待つのですか? → 待つ必要はありません。やむを得ない事情による転籍は、本人意向転籍の期間要件とは別です。

まとめ

本人意向による転籍には、期間、技能・日本語、同一業務区分、転籍先の優良要件、転籍者割合、費用支払いがあります。転籍者割合と通常の受入れ人数枠は別の制限です。

やむを得ない事情による転籍は別枠で、期間などの要件は適用されません。転籍の妨害ではなく、選ばれる処遇と育成体制を整えてください。

参考リンク

外国人材の日本語教育を、AIで

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