「測っただけでは、学生は伸びません」
会話力を測れる機会は年に一度の卒業試験だけでした。まず1年生約60名で日本語会話能力測定を実施し、全学年約130名への拡大と測定後の練習を計画する取り組みを伺いました。
JILC 日本文化語学院

藤井 様
教務主任

導入前に抱えていたこと
会話力を測る手段が、年に一度しかなかった
当校ではこれまで、学生の会話力を客観的に測る機会が卒業試験でした。教員が一人ひとりと向き合って口頭でテストをする形式で、丁寧に見られる一方、実施できるのは年に一度が限界です。
そうなると、在学中の伸びを、途中の段階で捉えることができません。日々接している教員には手応えとして分かっていても、それを本人に示したり、指導計画に反映したりするための共通の指標がない。ここをどうにかしたいと考えていました。
多様な背景の学生に、一人ひとり最適な学習を届けたい
当校にはアジア各国から学生が集まります。母語も、来日前の学習歴も、目指す進路もそれぞれ違います。
卒業までにCEFRのB2レベルへ引き上げることが、進学や就職を見据えた当校の目標です。ただ、出発点が一人ひとり異なる以上、全員に同じ授業を届けるだけでは最適にはなりません。誰にどの段階の学習が必要なのかを、細かく把握したい。それがクラス編成の精度にも直結します。
評価の客観性を、さらに高めたい
口頭テストは教員が一人ひとりと向き合って実施します。丁寧な指導ができる一方で、評価の物差しを完全に揃えることは、人が行う以上どうしても難しいという面があります。
修了試験は学生の進路に関わるものです。教員の指導力とは別の次元で、誰が見ても同じ結果になる客観的な指標を持っておきたい。これは以前から考えていたことでした。
いま、どう使っているか
1年生約60名から始め、全学年と教員へ
まず1年生の約60名を対象に会話能力テストを実施しました。夏休みに入る前に、現状を把握しておきたかったからです。
その後、2年生約70名を加えた在籍130名全員と、教員にも受けてもらう計画で進めています。教員自身が受けてみることで、学生が何を求められているのかを共有できます。
会話力を、同じ基準で確認できる
今回実施した1年生約60名の会話力が、同じ基準で一覧になりました。今後は全学年へ広げる計画です。
日本語教育の世界では、JLPTの試験結果と会話力は必ずしも一致しないと言われます。読み書きに強い学生、話すことに強い学生、それぞれの伸び方があります。その違いを共通の基準で確認できれば、一人ひとりに合った指導ができる。クラス編成の根拠にもなりますし、学生本人にとっても自分の強みが分かる材料になります。
ワークブックで、日々の学習を支える
会話の測定と並行して、日々の学習にはワークブックを使っています。
HandsOn AIには、初級から中級まで各段階のワークブックが揃っています。当校の授業の進度に合わせて、その時期に必要なものを選んで配信するという使い方です。教材そのものを変える必要がないので、教員側の負担はほとんどありません。
問題の難易度は一人ひとりの理解度に応じて自動で調整されます。連続して正解すればレベルが上がり、つまずいたところにはなぞり書きなどの補助が入る。同じ問題を繰り返し解いて全問正解を目指す設計なので、記憶に定着するまで学生が自分のペースで回せます。
使ってみて、良かったこと
実施の手軽さが、想像以上だった
いちばん驚いたのは実施の手軽さでした。
受験用のURLを発行して配布するだけで、テストが始まります。
学生のメールアドレスは不要で、学籍番号と名前で管理できます。今回の実施では、学生1人あたり10〜15分程度で受験を終えました。問題は自動で進んでいくため、教員が横についている必要もありません。
学生が好きな時間に受けられるので、順番待ちも発生しません。教員が一人ずつ呼んで、他の学生を待たせて、という運用がまるごとなくなります。
教員が向き合っていた時間を、別のことに使える
会話テストの実施にかかっていた時間を、そのまま別のことに回せると考えています。年に一度の卒業試験ですら相当な負担でしたから、それを全学年・全員に広げようとすれば、以前のやり方では不可能でした。
教員の指導と、客観的な指標を組み合わせられる
同じ基準で、同じ問題形式で、AIが判定します。
教員が日々見ている一人ひとりの様子と、AIによる共通の評価結果。この2つを組み合わせることで、指導の判断材料を増やせると考えています。学生に結果を説明するときも、共通の物差しがあるほうが伝わりやすい。修了試験に共通の評価材料を加えられるという意味でも、大きいことだと思っています。
特に気に入っているところ
CEFRベースで、結果が客観的に出る
出題はモノローグ(発表)、図解の説明、音声の要約、AIとのやりとりの4種類で、結果はCEFRのレベルで表示されます。一覧で見られて、PDFでも出せる。
数百問の問題バンクからランダムに出題されるため、特定の問題だけを覚えて受験することを避けやすい点も安心材料でした。全員の会話力を、共通の物差しで確認できます。
進学・就職の指導材料になる
留学生の進学と就職の競争は年々厳しくなっています。進学先の面接では、その場で考えて答える力が問われます。日本語の知識があることと、面接の場で伝えられることは別の力です。
会話力が客観的に見えていれば、どの学生にどんな練習が必要かを、事前に判断できるようになります。指導のかけどころが分かる、ということです。
これから取り組んでいきたいこと
2年生の面接対策に、AIロープレを使っていきたい
次に力を入れたいのが、2年生の面接対策です。
進学先の面接では、用意した答えを言うだけでは通りません。「なぜそう思うのか」「具体的にはどうするのか」と重ねて聞かれます。その場で考えて、自分の言葉で答える力が問われるわけです。
これまで、面接練習は教員が一人ずつ相手をするしかありませんでした。ですから練習できる回数にどうしても限りがある。本番までに一人あたり何回できるかを考えると、十分とは言えませんでした。
AIロープレなら、学生が納得するまで何度でも練習できます。志望先に合わせたシナリオも用意できると伺っているので、「この学校の面接ではこういうことを聞かれる」という形で準備させられます。教員が付きっきりにならなくても、練習の量を確保できる。ここに期待しています。
「測る」と「練習する」を、つなげていきたい
日本語会話能力測定で分かるのは、あくまで現在地です。測っただけでは、学生は伸びません。
測って、弱いところが分かって、そこを練習して、また測る。この流れがひと続きになって初めて意味があります。会話力の評価とAIロープレでの練習が同じ環境の中にあることは、私たちにとって大きい。
会話力を測り、その結果をもとに練習を配信し、伸びをまた測る。この形を2年生の指導の中でつくっていきたいと考えています。
学生の日本語人生は、卒業では終わらない
日本語会話能力測定は、卒業要件の判定だけでなく、入国前の段階での判定にも使えると考えています。入学時のプレイスメントテストとしての活用も検討しています。
学生の日本語人生は、入学の日に始まって卒業の日に終わるわけではありません。来日を決めた時点から、日本で働き始めた後まで続いていきます。学校が関われるのはその一部でしかない。
だからこそ、その前後までつながって支えられる形になっていってほしい。日本語教育に関わる私たちが本当に必要としているのは、そういう存在だと思っています。