「人が判断し、AIがその判断に必要な情報と練習機会を提供する」
JLPTなどの試験結果と、面接で質問を理解し自分の考えを伝える力は、必ずしも一致しません。インド子会社AtoJ HIRAMEKIで年間約1,000名を指導する同社グループが、人による面談に共通の評価指標を組み合わせる理由を伺いました。
株式会社ASIA to JAPAN
三瓶 雅人 様
代表取締役

導入前に抱えていたこと
日本語試験の結果だけでは、実際の会話力が分からなかった
当社はアジア各国の学生と日本企業をつなぐ採用支援を行っており、インドでは子会社のAtoJ HIRAMEKIが日本語教育を担っています。本事例では、このインド拠点での活用について伺いました。
学生の日本語力は、JLPTなどの試験結果や授業内の評価をもとに確認してきました。ただ、日本語試験の結果と、面接で質問を理解し、自分の考えを伝えられる力は必ずしも一致しません。
同程度の試験結果の学生でも、会話になると大きな差があります。試験結果だけでは見えない「実際に話せる力」を、共通の基準で把握したいと考えていました。
多くの学生を、人による面談だけで確認することには限界があった
学生の会話力を丁寧に見るには、人による面談が欠かせません。一方で、年間約1,000名を指導する中、全員を同じ条件で確認し、比較するには相当な時間がかかります。
また、人が評価する以上、担当者によって判断に違いが生じる可能性もあります。
講師による日々の評価や面談を大切にしながら、候補者選定の参考となる客観的な指標を加えたいと考えていました。
授業外でも、学習と会話練習を続けられる環境が必要だった
会話力を伸ばすには、知識を学ぶだけでなく、実際に話す回数を増やす必要があります。
ただ、講師が一人ひとりと練習できる時間には限りがあります。学生が授業外でも問題に取り組み、面接や職場を想定した会話を繰り返し練習できる環境が必要でした。
「測る」「学ぶ」「話す」を分断せず、一つの流れにしたいというのが導入前の課題でした。
いま、どう使っているか
会話能力測定で、学生の現在地を把握する
日本語レベルの異なる学生を対象に、HandsOn AIの日本語会話能力測定を実施しています。
設問で求められた内容を伝えられたかというタスク達成度に加え、表現の幅、正確さ、流暢さ、やりとり、一貫性の観点から評価され、結果はCEFRレベルで確認できます。
学生ごとの強みと課題を把握し、日本語レベルごとの違いや、次に伸ばすべき能力を確認しています。
人による面談と組み合わせ、候補者選定に活用する
評価結果だけで、学生の合否や推薦可否を決めているわけではありません。
講師が日々見ている学生の様子、授業内の評価、人による面談と組み合わせて活用しています。
事前に評価結果を確認することで、面談で詳しく見るべき点が明確になります。AIによる共通指標を、人による丁寧な判断を支える情報として使っています。
ワークブックとAIロールプレイで、学習と会話練習を行う
会話能力の測定と並行して、学生はワークブックで語彙・文法・日本語試験対策などを学習しています。
AIロールプレイでは、自己紹介、志望理由、経験の説明、上司への報告、分からないことの質問など、日本企業の面接や職場を想定した練習を行います。
人による会話研修は引き続き講師が担当し、AIロールプレイは、授業外で学生が自分のペースで繰り返し話すための環境として活用しています。
使ってみて、良かったこと
試験結果だけでは見えない、会話力の違いが分かる
実際に評価すると、同じクラスや同程度の試験結果の学生でも、会話力には違いがあることが分かります。
語彙や文法の知識が豊富な学生、質問に応じた受け答えが得意な学生、内容を整理して説明できる学生など、それぞれの強みが見えます。
講師が感覚的に把握していた特徴を、共通の指標でも確認できるため、学生へのフィードバックや候補者選定の根拠が明確になりました。
面談を、より深い確認の時間にできる
評価結果を事前に確認することで、面談の中で一から会話力を把握する必要がなくなります。
流暢さに課題があれば、緊張した場面でも説明できるかを見る。やりとりに課題があれば、追加質問への対応を確認する。学生ごとに面談の焦点を変えられます。
AI評価によって面談をなくすのではなく、人による面談をより有効な時間にできる点に価値を感じています。
評価後の学習まで、同じ環境で続けられる
測定結果を、その後の学習と練習につなげることが重要です。
HandsOn AIでは、評価後にワークブックで基礎力を高め、AIロールプレイで実際に話す練習ができます。学生は自分の時間に繰り返し取り組み、講師は管理画面から実施状況を確認できます。
現在地の把握から、その後の学習・練習までを一つにつなげられることが、導入による大きな変化です。
特に気に入っているところ
「話せる・話せない」だけで終わらない
特に評価しているのは、会話力を一つの印象だけで判断しない点です。
タスクを達成できたかに加えて、表現の幅、正確さ、流暢さ、やりとり、一貫性から結果を確認できます。
話すスピードだけではなく、質問を理解し、必要な情報を整理して伝えられるかが見えるため、学生が次に何を伸ばすべきかを具体的に考えられます。
人による教育と選考を補完できる
当社では、学生との対話や講師による指導を大切にしています。
HandsOn AIは、人による教育や候補者選定を置き換えるものではありません。講師が見ている学生の姿に、共通の評価結果と学習データを加えることで、一人ひとりをより深く理解できます。
これから取り組んでいきたいこと
「測る」「学ぶ」「話す」を、継続的に回していきたい
今後は、一定期間のワークブック、AIロールプレイ、人による会話研修の後に、再度会話能力測定を実施したいと考えています。
評価前後を比較し、どの能力が伸び、どの課題が残っているのかを確認する。結果に応じて、次に取り組むワークブックやロールプレイを変えていく。
測って、学んで、話して、もう一度測る。 このサイクルを学生一人ひとりの教育に組み込んでいきたいです。
日本企業の面接・職場に近い練習を増やしたい
学生に必要なのは、試験に合格するための日本語だけではありません。
面接で自分の経験や志望理由を説明する力、入社後に上司へ報告し、分からないことを質問する力が求められます。
今後は、学生の就職先や職種に応じたロールプレイを増やし、就職が決まるための日本語から、就職後に仕事を進めるための日本語まで練習できる環境にしていきたいと考えています。
来日後の継続学習にも、つなげていきたい
学生の日本語学習は、日本企業への内定や来日が決まった時点で終わるものではありません。
実際に日本で働き始めると、上司への報告、同僚への相談、業務上の確認など、配属先に応じた日本語が必要になります。一方で、仕事や生活が始まると、決まった時間に学習を続けることが難しくなる場合もあります。
来日前の評価結果や学習状況を引き継ぎ、来日後もワークブックとAIロールプレイで学び、定期的に会話力を測る。インドでの教育から、日本企業で働き始めた後まで、学習を分断せずに支援できる形をつくっていきたいと考えています。